青春小説『少年たちの終わら
「在日コリアンを、自分のことを書こうと思えた」没後20年、作家・鷺沢萠さんに宛てた深沢潮さんの手紙 名無し 04/18 4282071
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 青春小説『少年たちの終わらない夜』などで知られ、『駆ける少年』で泉鏡花文学賞を受賞した作家の鷺沢萠(さぎさわ・めぐむ)さんが亡くなってから20年。祖母が在日コリアンと知って理解を深め、彼らを主人公にした小説を書いてきた鷺沢さんに宛て、両親が在日コリアンで、鷺沢さんの作品に触発されたという作家、深沢潮さんが手紙を寄せた。

◇鷺沢萠さま

 明るい春の陽射(ひざ)しのもと、桜の花が東京の街並みに彩を与えています。このころは、浮き立つような気持ちになる一方で、20年前の2004年4月11日を喪失の痛みとともに思い出します。
 私は生前のあなたとは面識がありません。けれども、遺作の短編小説集「ビューティフル・ネーム」に出会って以来、あなたの紡いだ言葉にとても助けられました。通称名で暮らしていた在日コリアンが本名を名乗るにいたったことを描いた物語を読んで「在日コリアンのことを、自分のことを書こう」と切実に思ったのです。作家を志し、文学賞に応募していたころのことです。そして、自分の属性に向き合って書いた短編小説「金江のおばさん」が2012年に新人文学賞をいただき、私は小説家となることができました。

無題 名無し 04/18 4282072
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 当時、東京の新大久保や川崎の桜本、大阪の鶴橋といった在日コリアンの集住地域に排外主義団体が押し寄せ、ヘイトスピーチをまき散らすデモが行われていました。私はその事実を目の当たりにして、いてもたってもいられない気持ちで、参議院議員会館で行われた、ヘイトスピーチに抗(あらが)う集会に出向きました。そこで、川崎桜本に暮らす在日コリアン女性、崔江以子(チェ・カンイジャ)さんと出会ったのです。たまたま「ひとかどの父へ」という川崎桜本が舞台のひとつとなっている小説を書いたあとで、私から江以子さんに話しかけた記憶があります。

 縁とは不思議なものです。江以子さんはあなたの「私の話」という私小説に出てくるあなたの親友で、「ビューティフル・ネーム」のなかの短編「故郷の春」のモデルだったこと、あなたが江以子さんの働く川崎ふれあい館で、識字学級のハルモニたちと心を通わせていたことを後に知りました。
無題 名無し 04/18 4282073
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 江以子さんは、ヘイトスピーチ規制法や、川崎での条例の成立に貢献したことで、ネット上だけでなく、現実でもすさまじいヘイトスピーチを浴びています。それでも勤務先に脅迫文や嫌がらせの品々が送られてくるといったことにもくじけずに、差別と闘い続けています。そんな江以子さんのなかに、戦争に反対し、差別を許さなかったあなたの存在を感じます。

 昨年、あなたと親しかったひとたちがあなたを偲(しの)ぶ会に、江以子さんのご厚意で参加させていただきました。あなたのお人柄の一端に触れることができたようで、貴重なひとときでした。そこで、江以子さんの生まれたばかりの息子さんに宛てたあなたの手紙を拝読しました。あなたは、イモ(韓国では母方おばさんのこと)として、彼を深くいつくしんでいましたね。いま彼は江以子さんと一緒に差別に対して毅然(きぜん)と闘っています。さすがあなたのチョッカ(おいっ子)です。
無題 名無し 04/18 4282074
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 韓国の春は、韓国の代表的な花ケナリの鮮やかな黄色と、日本の象徴のような桜のやわらかな薄桃色がともに街を美しく飾ります。そして街には、日本からの留学生もたくさんいて、それらの花々に励まされて生活しているでしょう。あなたが留学した経験を描いた「ケナリも花、サクラも花」を、彼らにあらためて読んでほしいです。20年前よりずっと韓国と日本が近くなったいまでも、留学生はさまざまな葛藤を抱くでしょう。韓国で「君はこの国を好きか」と訊(き)かれて、答えを保留にしたくなる、悩める在日コリアンも多いでしょう。

 あなたの言葉は、いまでも生き続けています。

 書いてくださって、ありがとうございます。

深沢潮

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