“生物学的に女性”の利用者に限定した女性専用ジム、トランスジェンダーの排除は、女性らしさの狭義な考え方を助長するばかりだと、非難が殺到している。

フィットネス・インフルエンサーのナタリー・バーネットが、自身の女性専用ジムからトランスジェンダー女性を“排除”したことで批判を集めている。彼女はロンドン市内南西部のワンズワースに新しいジム『The Girls Spot』を、2025年春にオープンする予定だ。バーネットはこのジムを作るために4年かけて資金集めをし、クラウドファンディングのGoFundMeを通して22900ポンド（約450万円）を調達した。

2021年、彼女はトランスジェンダーである人々を包含するメッセージをツイート。

「トランスジェンダーの女性が私のジムに来ることに問題がある人は、他のジムでトレーニングして下さい。これについてはこれまで何度か議論しましたが、トランスジェンダー女性は女性で、守る必要があるマイノリティーです。どうかトランス嫌悪は慎んで下さい」と発信し、トランス女性を歓迎していたのだ。

ところが、バーネットは先週末、ジムは“生物学上”の女性に限定するとXに投稿（その後削除）。「The Girls Spotは生物学上の女性限定のジムとして運営し、ジム内で女性が受けるハラスメントや性的暴行＆暴力に対処します。出回っているツイートは4年前のもので、コンセプトを作る初期段階にありました」と書いた。

すると、その投稿はかなりの非難を集めた。排除されて失望したトランスジェンダー女性からも、トランスジェンダーを包含すべきだと主張する人々からも。

バーネットはその後動画を投稿し、「軽々しく決断したことではない」が、ジムは“シスジェンダー女性だけの場所”として 運営し、トランスジェンダーの人を含めないと明確に述べた。

包含性を確約していたジムが、トランス女性を排除する考えに陥るのを見るのは悲しい。女性としての正当性を疑問視されたトランス女性にとっては非常に辛いことに違いない。

トランス女性には他の女性と一緒にいられる安全な場所が必要なのを忘れないことが重要だ。彼女たちは女性専用の場所の安全性を脅かす存在ではない。ある学術的研究から、トランスジェンダーの50〜66％が人生で性的虐待や性的暴行を受けた経験があり、シスジェンダー女性が暴力の犠牲になるより4倍多いと示唆されている。

しかし、反トランスやトランスジェンダー蔑視（トランス女性に向けられる蔑視）を大局的な視点で見ると、バーネットのジムのポリシーはその中の小さな一部分に過ぎない。

スポーツ界におけるトランス女性包含を規制し、彼女たちをシスジェンダー女性専用スペースから締め出そうとすることが、「生物学上の女性を守る」という旗印の下に正当化されることが非常に多い。

しかし、女性を厳密に生物学的に定義するという罠にハマると、全ての女性に害を及ぼし、女性らしさの制限的な定義を強化して、ジェンダー規範のさらなる監視を助長する。

オリンピックでアルジェリアのボクシング選手イマネ・ケリフがトランスジェンダーであることをSNSで批判されたように、反トランスジェンダーのスタンスを強化してシスジェンダー女性のトランス嫌悪ハラスメントにエスカレートさせようとしている。

トランスジェンダー女性は女性である。そう言うことが物議を醸すべきではない。私たちは「女性」とは一つの意味しか持たないわけではないことを受け入れる必要がある。女性は多面的で流動的で美しい多様性に溢れているのだ。

https://www.harpersbazaar.com/jp/lifestyle/social-issue/a64225393/womens-only-gym-backlash-excluding-trans-women-250319-lift1/